◇降り籠められて、夕立−2/4−
だんだんと強まる雨の中、馬場へ向かって走っていると乗馬服を着た幾人もの生徒たちとすれ違った。僕の姿を見て騒いでいる子もいるけれど、そんなこと気にしている余裕はない。
それより白亜が心配でならなかった。
「枢センパイっ!」
聞き慣れた声に振り向くと、優姫がこちらへ駆けて来ていた。
濡れた前髪が額に張り付いている。
「どうしてここに?いえっ、それより白亜を見ませんでしたか!?」
「君と一緒じゃないのかい優姫?」
「見失っちゃったんです。白亜、乗馬はいつも木陰で見学しているんですけど、どこを探してもいなくて…」
今ごろきっと震えています、と優姫は自分が泣き出しそうな声で言った。
その頬は上気している。
白亜を探してずっと走りまわっていたのだろう。
「大丈夫だよ、優姫。白亜は僕が見つけるから」
「でも…!」
「君はもうお帰り。そんなに濡れては風邪を引くよ。それに、もしかしたら白亜は学園に戻っているかもしれない。その時は…頼むね」
「……はいっ」
優姫は僕の言葉に微笑むと、校舎の方に駆けて行った。