◇第四十九罪:赦し−9/9−
私たちはしばらくの間、光の消えた湖を見つめていた。『枢…、あの子たち笑ってたわ』
「ああ、夢みたいだね」
『でも夢じゃないのよね…』
枢も泣いていた。その雫をそっと拭う。
枢は私の眦にやさしいキスを落した。
「白亜…おねえさま、おにいさま、今のって……」
優姫と零がためらいがちに近づいて来た。
二人の目にも涙の跡がある。
『あの子たちが残してくれた奇跡よ』
こんなに満ち足りて心が軽くなったのはいつぶりだろう。
また逢えるなんて思ってもみなかった。
この懐かしい湖で、湖白と湖雪はずっと待っていてくれたのだ。
そしてこれからも二つの心は溶け合いながらこの湖に眠るのだろう。
白い雪が降り積もる。
けれど胸に広がるのは、深い悲しみではなく温かな愛おしさ。
もう抱きしめられないことが寂しいけれど、思い出しても今までのように苦しくない。
隣には枢がいる。
目の前には優姫と零がいる。
「白亜、帰ろう。そしてまたここに逢いに来よう」
『ええ、枢』
繋いだ手を握りしめる。
貴方がいたから
あなたたちがいるから
生きてゆける。
これからも、この永遠を。
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