◇第四十九罪:赦し−5/9−
『私は……』口を開きかけたその時、後ろから駆けてくる足音がした。
「おねえさま!おにいさま!」
「白亜!」
『優姫!?零!?どうして二人ともここへ…!?』
優姫と零が城を抜けこちら目掛けて走ってくる。
思いがけない二人の登場に驚いていると、優姫が飛び掛かるようにきつく抱きついて来た。
「二人の後を追って来たんだよ!あんな言葉を残して行っちゃうから心配で心配で…っ。何かあったらどうしようって…っ」
箍が外れたように優姫は泣きじゃくった。
「お願いおねえさま、白亜、突然いなくならないで。どこにも行かないで…っ」
『優姫…』
「あんな長い記憶を見せて急に去るなんて、優姫じゃなくても不安になるだろ…。追い付いて良かった」
『零…』
少し疲れた様子の零は、安堵と怒りが滲んだ表情で私たちの前で立ち止まった。
「恨まれて当然なんて、そんなこと言うな。俺も壱縷も白亜を恨む気持ちなんて全くないんだ。むしろ白亜は俺たちの呪縛を解いてくれた。これでやっと俺たちは一人と一人の人間として二人一緒に生きていけるんだ」
『でもその呪縛の原因を作ったのは私なのよ。ハンターの家に生まれるはずだった何十、何百人もの双子が私のせいで死んでいった。呪いがなければあなたたちはもっと自由に生きて来れたはず』
「お前のせいじゃない!白亜が殺した訳じゃないだろう。少なくとも俺たちは白亜に救われたんだ。それなのにお前がそんなにも自分を責めていたら俺たちまで苦しくなる…」
『零…』
「零の言う通りだよ。白亜は自分を追い詰めすぎるよ。白亜が私たちを大事に思ってくれるように、私たちも白亜のことが大事なんだよ!だから一緒に帰ろう?」
ぽろぽろと涙を零しながら優姫は言った。
ああ、なんて強くて優しい子たちだろう。
私の罪を、真実を知ってもなお、手を差し伸ばして水底から引き上げてくれる。
湖白が、萌香たちが繋いでくれた命。
零と優姫は私の光。
二人が私の懺悔を聞いて、それでも受け入れてくれるのならば、甘えてもいいのだろうか。
「白亜…」
枢が促すように私を呼んだ。
その手はずっと私の手を握ってくれている。
貴方に伝えなくちゃ。私の本当の想いを。