◇第四十一罪:追憶V―タナトス―−8/9−
やっと我に返ったのは朝日が昇った時だった。『あ……っ』
「……っ…」
窓から差し込む太陽の光は、残酷に血に塗れた私たちを照らし出した。
そのあまりの眩しさに目が焼かれるようだった。
逃げるように寝室に戻ってすべてのカーテンを閉め切った。
『……枢……?私たち……"何"をしたの?』
震える声でなんとかそう言うと、枢は強く私を抱きしめた。
「……わからない。……でも、喉の渇きがおさまった」
枢の声も、震えていた。
『私も……だわ…。でも…、でも私たちが飲んだのは……水じゃ…ない……』
自分たちが今し方、何を口にしていたのか。
あまりにおぞましくて、二人とも声に出すことが出来なかった。
しかしいくら事実を否定しても、身体中にべったりとこびり付いた赤い染みが全てを物語っていた。
そして、口の中に鮮やかに残る甘い後味。
血を啜り、あまつさえそれを美味しいと感じるなんて。
『嗚呼………、お赦しください……』
縋るように零れた言葉。
十字を切り、手を合わせ、神の名前を呼ぼうとした。
けれど、出来なかった。
赤く染まったこの手で十字を切るなんて
血にまみれたこの唇で神の御名を呼ぶなんて
そんなことは出来なかった。
罪を犯してしまったこの身では、それすらも冒涜になるだろう。
そして、どんなに赦しを乞うても、私たちはきっと赦されない。
赦されない―――。
互いを強く抱きしめ合っても、身体の震えは止まらなかった。
ただ、湖雪だけが満足そうな顔で寝息を立てていた。