王妃の日記 | ナノ


 ◇第三罪:Bitter day−4/5−
「さて、今日は聖・ショコラトルデー。学園中が浮足立っている。何かのはずみで夜間部の正体がばれるかもしれない。いつも以上に気を配ってくれたまえ!学園守護係の諸君!」

理事長は声高らかに言った。
はい理事長っ!と元気よく返事する優姫とは対照的に、零はボソっと呟く。

「んな行事、禁止すればいーだろーに」

『あら?女の子にとっては大事な日よ』

「そうだよ錐生くん…そんなことしたら暴動が起きるよ?まあ、それもこれも、ウチの吸血鬼の彼らが一様に見目麗しく優秀すぎるせいだね…。いやはや…味方だと、何とも頼もしい人材」

理事長の言葉を聞いて、零の目がギラッと光った。

「俺らの前で"奴ら"をほめちぎんじゃねーよってゆってます」

優姫がその気持ちを代弁する。

「…まあ、はるか昔から吸血鬼は人間の"敵"だったわけだけど…」

理事長は語り出した。

「"平和な共存"を望む吸血鬼もいるんだよ…。そんな彼らの子息を吸血鬼と人間の架け橋として教育できることを誇りに思うよ……。錐生くん…、今は無理でも…いつかはボクの考えを理解してほしい」

零の顔は曇る。

「…無理ですね。過去が消えでもしない限り……」

そう…零は吸血鬼を憎んでいる。
心の底から……。
白亜と優姫が実は吸血鬼だと知った時、彼はどうするのだろう……。
そして、そのことを知っていて今も隠しているのだと知ったら……。
白亜の顔もまた暗くなった。

「あ……えっとえっとー…はい!理事…お義父さん!聖・ショコラトルデーのプレゼント!!」

優姫はその場の沈んだ雰囲気を変えようと、理事長の机の上に正座して細長い紙を小さく折ったモノを差し出した。
"肩もみもみ券二十回分"をもらって、理事長は一気に機嫌を直し周りにハートまで飛ばせていた。

「はい!白亜と零にも毎年恒例の!」

白亜に渡されたのは"お手伝い券十回分"、零のは"パシリ券一回分"。
十年間変わらないプレゼントを見て、白亜は愛おしそうに微笑んだ。

『ありがとう、優姫…』

そのあまりに可憐な笑みに、思わず三人は目を奪われた。

(((……白亜、その笑顔は反則だ……!!)))

『どうしたの?三人とも。ボーっとして』

白亜に声をかけられて、三人はハッと我に返る。

『はい、私からの聖・ショコラトルデーのチョコレート』

白亜は白い箱を三つ差し出した。

「やったー!!白亜のお菓子大好き〜!!」

優姫は目を輝かせ、理事長は白亜と優姫のプレゼントに頬ずりし、じーんと感慨に耽る。
そして零は誰にも見られることなく、そっと顔を赤らめた。

『優姫、零、そろそろ行きましょう。早くしないと授業が始るわ』

白亜に促され、三人は足早に教室に向かった。

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