王妃の日記 | ナノ


 ◇第二十九罪:葛藤−5/8−
『枢…!?…何を言っているの?それこそ駄目よ、貴方が血を流す必要はないわ!』

「彼の中により多くの玖蘭の血が入るのに越したことはない。そうだろう?」

『でも…っ』

「白亜…、今、君が零に血を与えても呪縛は完全に解けないよ」

枢が言うことはもっともだった。
だけど…

「星煉、いるね」

「はい、我が君」

「事態が落ち着くまで白亜を瑠佳の部屋に連れて行って」

「畏まりました。……さあ、白亜様」

枢の呼びかけで現れた星煉に腕を引かれ、部屋の外へと連れて行かれる。
あまりに急な処置に驚くばかりで思考が付いつかない。

『待って…枢…っ』

「………ごめんね、白亜」

枢に向かって手を伸ばしても、それは繋がれることはなく空を彷徨うばかり。

どうして…?

『枢…っ』

閉まる扉の隙間から寂しげに微笑う枢の顔が見えた。

どうして…?

罪を犯したのは私なのに
どうして貴方がそんなにも苦しげな顔をしているの?

償わなければいけないのは私なのに
どうして貴方が謝るの?

どうして…?
どうして…?

『枢…っ!!』

必死に呼んでも振り向いてさえくれない。
永い永いこの生の中で、枢が私の呼びかけに答えてくれなかったのは初めてだった。

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