王妃の日記 | ナノ


 ◇第二十九罪:葛藤−4/8−
side 白亜

「優姫に薔薇は渡せた?」

部屋に戻ると枢はいつものようにカウチで寛いでいた。

『ええ、……過去のことを聞きたがっていたんでしょうけど、あの子、何も言わなかった……』

「君を疑いたくないんだろうね」

『…優しい子。疑われるどころか、憎まれたって文句は言えないのに……』

この世界で一番の幸せを願うあの子を苦しめているのは私。
出来ることならその全ての望みを叶えてあげたい。
けれど優姫のため、そして優姫の自由を願った樹里のために
私はあの子を騙し続ける。

枢に近寄れば、当然のごとく伸ばされたその腕。
ゆるやかに抱き寄せられて枢に包まれるように座ると、少しだけ心が安らいだ。
いつだって、どんな私だってこの腕は受け入れてくれる。
罪に塗れた私を抱いて自身が汚れることも厭わずに。

その時、ある気配が月の寮に近づいてきていた。
これは紛れもなく…

『………零』

「ああ、…ここへ来ているね」

学園に着いた時にちらりと見た零は、かなり"進行"していた。
辛うじて正気を保っているのはその並はずれた精神力の賜。
でもきっともう……時間の問題。
そっとアテナを手に取る。

『枢…、私……』

「駄目だよ、白亜」

『でも…!』

口には出さなくても枢は私のしようとすることを察して、それを制した。
今の零を狂気から救う方法。純血の血を与えること。
それは枢の計画の一部であり、そして私の贖罪でもある。

『どうして…!?』

「駄目だよ。まだ時期じゃない」

『でも零はこのままじゃ…!』

「………僕が行くよ」

208

/
[ ⇒back]
page:




×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -