王妃の日記 | ナノ


 ◇第二十九罪:葛藤−2/8−
side 優姫

風が髪をさらった。
霧の中から現れる幾多の影。

「お帰りなさい、みなさん」

黒主学園の長期休暇が終わった。

途端、白亜が私を見るなり駆け出してきた。

『優姫…っ!』

ふわりと薔薇の香りがして、慣れ親しんだぬくもりが体を包む。

「白亜…、おかえり」

いつだってこの腕は私に安らぎを与えてくれたのに
心がざらつくのはどうしてだろう。

『こんなに長く離れていたのは初めてだわ。私がいない間、何も変ったことはなかった?』

私の頭を撫でながら、心配そうに白亜は言った。

「え…、あ、……うん」

私は曖昧な返事を返す。
白亜にだけは何でも話すことが出来たのに
咄嗟に嘘をついてしまったのは、どうして…?

『そう…。それなら良かった……』

白亜はどこか寂しげに笑った。


ねえ白亜
私、ハンター協会に行って来たんだよ
私の過去を探しに行ったの
でも見つからなかった
見ることが出来なかったの
十年前の冬のページだけが燃えちゃって

ねえ白亜
あなたは何かを知っているんじゃないの…?


くぐもる言葉とは裏腹に荒波立つ心中。
深まる白亜への疑惑。
私はぐっと制服の裾を掴んだ。
言わなくちゃ。

「白亜…、聞きたいことがあるの…。あとで校舎に来て…」

お願い
日を追うごとに渦を巻くこの不安から
どうか解放して

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