◇第二十八罪:隠蔽−6/6−
side 白亜血がざわめく。
吐き気を催すほどの禍々しい気配。
「枢っ…!」
急いでリビングに駆け込んだ。
体中が震えてどうしようもない。
「白亜、大丈夫。落ち着いて」
枢が抱きしめてくれてもなお、心臓は気持ちが悪くなるほどに早鐘を打っている。
きっと枢も感じ取っっているはず。
魔物の胎動を。
「枢様、ただいま戻りました」
「おかえり星煉。どうだった…?」
枢の肩に顔を埋めたまま会話を聞く。
間違いであってほしい。
けれど体中の細胞全てが確信していた。
「動きを見せました…。我が主」
あいつが、目覚めてしまった。
世に出回っている『王妃の日記』は、皆が真実だと思っている歴史は捻じ曲げられている。
そんなことが出来るのは元老院と
――――玖蘭の者だけ。
だから私はあいつが…李土が許せない。
歴史を改竄した元老院が許せない。
真実を隠蔽した者たちが、許せない。
ああでも
それは私も同じだわ。
過去を覆い隠し、真実を偽って、虚構の幸せな箱庭を作り上げて
あの子を騙しているんだから。
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