◇第二十八罪:隠蔽−5/6−
部屋に戻りいくつもの古い資料をベッドの上に広げていると、扉がノックされた。「どうぞ」
「お邪魔してもいいかしら?」
「白亜様…!」
「薔薇を持ってきたのよ。瑠佳が摘み立てをおすそ分けしてくれたの。手伝ってくれてありがとう、暁」
白亜様の後ろには花瓶に生けた薔薇を持った暁がいた。
「あの…先程はすみません。詮索するような真似をして。出過ぎたことだとは分かっています。でも…!」
「いいのよ英。あなたが私たちを思ってくれているのだということはわかっているわ。…ありがとう」
「白亜様…」
白亜様は散らばった資料に目をやり、ベッドのふちに腰掛けて手元にあった物をパラリとめくった。
「さすが藍堂家ね。こんなに古いものまであるなんて…」
急にその表情が陰った。悲しみと怒りが混ざったような曇り。
白亜様が手に取った物は始祖時代の家系図だった。
「白亜様…?」
「…英は、始祖吸血鬼が何人いたのか知ってる?」
「七人、ではないのですか?」
白亜様が今手に持っているその家系図にも書いてある。
昔、家庭教師の先生からもそう習った。
「いいえ…。始祖はね、八人いたのよ」
そう仰った途端、白亜様はハッとした表情に変わった。
顔が酷く蒼ざめている。
「そのお一人は一体……白亜様?大丈夫ですか」
「…ごめんなさい、急に気分が悪くなったの。ちょっと失礼するわね」
そう言って白亜様は足早に出て行った。
真実と疑問だけをこの部屋に残して。