王妃の日記 | ナノ


 ◇第三罪:Bitter day−3/5−
「…あー、外が騒がしいみたいだね」

枢の機嫌を本格的に損ねる前にと拓麻は話題を変える。
まだ早朝だというのに何人もの人間の気配を感じた。

『ああ、本当…。普通科の女の子たちがたくさん待ってるみたいよ』

白亜は窓から外の様子を覗いた。

「ええ!?今から待ってるの?みんな気合い入ってるなー」

『それだけ女の子にとって大切な日ってことよ』

白亜はそっと枢を見た。
今日くらいは少しだけ想いを伝えようと思って、心を込めて作ったチョコレート。
自分のチョコだけ特別だと、枢はわかってくれるかしら……。

『あっ、優姫ったら塀に登ってる!もう、危なっかしいんだから…。私、行ってくるわね。じゃあまた夕刻に。おやすみなさい』

そう言い残すと白亜は枢が止める間もなくひらりと入ってきた窓から出て行った。

「はぁ、全く何度危ないと言えばわかってくれるんだろうね…」

「枢も大変だね。心配で気が気じゃないんでしょ。それにしても…うーん、今年もやっぱり義理チョコかぁ」

拓麻は袋の中から白い箱を一つ取り出して少しだけ残念そうに肩をすくめた。
自分のチョコと見比べて枢はクスリと微笑んだ。
赤い箱をいとおしむように細い指でなぞりながら。

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