◇第二十八罪:隠蔽−4/6−
『暁、瑠佳と莉磨ならついさっきすれ違ったわ』「ありがとうございます、白亜様」
廊下から白亜様の声が聞こえた。
枢様と腕を組んで部屋に入り、僕の正面のソファに座った。
『英、すごく綺麗な薔薇園だったわ。それでね、もし良かったら十年に一度しか咲かない薔薇を樹脂で固めて欲しいのだけれど…』
「え…ええ、白亜様。もちろんです」
「優姫ちゃんへのお土産?」
『ええ、拓麻』
「…藍堂」
白亜様と一緒に雑誌をパラパラとめくりながら枢様が言った。
その表情はさりげなさそうに見えて、深い。
「なにを考えていたの?」
「えっ…」
「言いにくいならいいよ」
全てを見透かす王者の目。
もしかしたら枢様は、僕が何を考えていたのかということすらわかっておられるんじゃないだろうか。
それでもあえて尋ねるということは、僕に何かを教えて下さろうとしているのか…。
「あの…一つ聞いてもいいですか」
「なに?」
普段なら絶対聞けないこと。
でも僕は意を決した。
「玖蘭様ご夫妻は…なぜ自害なさったのですか」
部屋が異様に静まり返った。
枢様と白亜様、二人の紅い瞳が僕を射抜く。
けれども僕は逃げない。
真実を知るために。
「これを聞いてくるということは答えもだいたいわかっているんだろう。――――両親はね…殺されたんだ」
僕は、逃げない。