◇第二十八罪:隠蔽−3/6−
side 英思い返せば、枢様はある時を境に雰囲気が変わってしまった。
ゆっくりと、でも確実に、まるで薄闇の孤独を纏うように。
それはご両親を亡くされた頃。
けれど今考えれば、それはちょうど白亜様と離れられた頃なんだ。
それに気付き、僕は枢様がどんなに白亜様を愛しておられるかを改めて知った。
白亜様が戻られてからの枢様の雰囲気はぐっとやわらかくなったから。
今でも貴族たちが避けているあの事件――玖蘭ご夫妻の自害。
ご両親を突然、それも一度に失って…。
……待てよ、白亜様はご自分のことを枢様の従妹と仰っていた。
とすれば、悠様と樹里様は叔父君と叔母君にあたるはずだ。
だけど家系図には「姪」や「養女」ではなく「娘」と記されていた。
にも関わらず悠様と樹里様に他にご兄妹がいた記録はない。
どうも何かが引っかかる。
白亜様が抱えていらっしゃる闇。
不自然なまでに急だった玖蘭ご夫妻の自害。
そして、『王妃の日記』。
すべてはきっと繋がっている…。
「おい英?瑠佳は?」
ふと気付けば、目の前に暁の顔があった。
「あー…、莉磨と庭見に行くってさっき出てった」
思考が遮るおぼろげな記憶を引き出す。
「ふーん…」
「ちょっとー、君が大人しいとつまんないんだけど」
何だと一条。
僕が考えごとしちゃいかんのか。