◇第二十八罪:隠蔽−2/6−
side 白亜藍堂家の別荘の薔薇園は、枢が言っていた通りとても美しい場所だった。
様々な種類の薔薇が咲き乱れている温室を、枢と一緒に腕を組んでゆっくりと歩く。
「ほら、白亜。これが十年に一度しか咲かない薔薇だよ」
『前に話してくれたものね。……綺麗』
鮮やかなローズピンクに思い出すのは十年前。
枢が私と優姫にしてくれたこの薔薇のお話。
『優姫にも見せてあげたいわ』
「じゃあお土産は決まったね」
その時、密かに飛ばしていた分身の目で優姫達がハンター協会に入っていくのを見た。
『枢…、優姫が協会に向かったみたい』
「君も分身を飛ばしていたの?」
『だって、心配で…』
きっと優姫が向かうのは記録保管室。
ハンターたちが独自に記している記録書には十年前のことも書いてあるはず。
純血種の夫婦の"自殺事件"が、自分に深く関係しているなんて優姫は思いもしないでしょうけど、それが『玖蘭』だということでもっと調べ出すかも知れない。
『理事長に頼んで来て良かったわ…』
「何を?」
『もし優姫が何らかの手がかりとなるものを見つけた時には、あの子の目に触れる前にそれを消して…って』
卑怯なことはわかってる。
汚いことはわかってる。
あの子が求めて止まないものを裏から手をまわして覆い隠して。
でも、どんな手段を使っても…
『あの子には少しでも長く、幸せな夢の中で笑っていて欲しいの。…たとえそれが造られた物でも』
「……白亜」
堪えきれずに溢れた涙が頬を伝う。
抱きしめられた温かい腕の中は、やさしい薔薇の香りがした。