◇第二十八罪:隠蔽−1/6−
side 零ハンターの始祖が"最も純血種に近い元人間の吸血鬼"…だと?
それは明らかに矛盾している。
そんな者が存在することなど有り得ない。
「ハンターの始祖が吸血鬼?それも最も純血種に近い元人間?…はっ、何の冗談だ」
協会長はにたりと笑う。
「冗談などではないよ、零。これは一部の者しか知らない、知ってはいけない真実。……お前が『錐生』だから聞かせてあげたんだよ」
これがまり亜の言ってた"隠されてきた真実"なのか?
しかしもっと問いただそうとした途端、向こうの方から叫び声が聞こえた。
「おや、お姫様が呼んでるよ」
「優姫…!?」
急いで向かうと机の上は煌々と燃えていた。
開かれた記録書が炎に包まれている。
「零…」
「それは…」
「わかんない…。目を通そうとしたら急に…」
それは十年前の冬のページ。
その時、窓の外を飛び去った黒い影に、俺は気付かなかった。