◇第二十七罪:霧中の探究者−10/10−
「零は好みそうにない分野だと思っていたんだけどねぇ。まぁ、『日記』に興味を持つのは良いことだ。吸血鬼がいて初めてハンターが成り立つ。我々の歴史は彼らとの戦いの歴史だ。ハンターにとっても『王妃の日記』は重要な歴史書だからね」横にいた協会長はそう言った直後、ぐっと顔を寄せてきた。
その表情は扇によって隠されていて見えない。
「零…、お前に一つ秘密を教えてやろう。ほとんど知られてはいないハンターの始祖についての真実を」
「ハンターの、始祖…?」
「ああ…。ある意味お前は歴代のハンターたちの中でも最も始祖に近いかもしれんな。…これは何の因果かねぇ」
「どういう意味だ」
「ハンターの始祖は最も純血種に近い元人間の吸血鬼……だったそうだよ」
目の前の男は、薄い唇でにんまりと弧を描いた。
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