王妃の日記 | ナノ


 ◇第二十七罪:霧中の探究者−7/10−
吸血鬼界の名門貴族、藍堂家待望の長男。
両親と三人の姉たちに甘やかされて育った僕は、世界で一番かわいいのもかしこいのも、間違いなく自分だと信じていた。
そんな確信が崩れたのは、枢様に初めて会ったあの日。
一目で特別な存在だとわかった。
けれど僕は、自分より優れたものの存在を認めたくなくて、「友達になってくれる…?」と言った枢様にきっぱりこう言ったんだ。

「やだ」

その後、家庭教師の先生に真っ青な顔で叱られた。


「なんて命知らずなことを英様!!」

眼鏡の向こうで青筋がぴくぴくと波打つ。
それに気付いて笑いそうになった僕は、暁によってとっさに口を塞がれた。
けれども話を聞くうちに次第に僕も先生のように青ざめていくことになる。

「では…、本日はお二人に我らが種族の成り立ちなどについてお話しましょう」

先生が開いた本は『王妃の日記』。
初めて見るその装丁に僕は目を留めた。

「先生、その本はなに?」

「これは『王妃の日記』です。我ら吸血鬼界の歴史をこれなしで語ることはできません。最古にして最重要の歴史書です。これは抄本ですが……」

「…"しょうほん"ってなに?」

「原本の一部を抜き書きにして編集した本です」

「じゃあその元の本はどこにあるの?」

「『王妃の日記』の原本は玖蘭家の方々にしか閲覧を許されていません」

そこで玖蘭の名前が出て来て、僕はどきりとした。
―――あの純血種の家系だ。

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