王妃の日記 | ナノ


 ◇第二十七罪:霧中の探究者−6/10−
『ああいうのを夫婦漫才っていうのね、瑠佳』

「…白亜様、その間違った知識はどこから……?」

『拓麻に借りた漫画に書いてあったのよ』

「……」

しばらく絶句し白亜様に正しい知識を教えた後、瑠佳は溜め息を付いて聞えよがしに言った。

「いつものように遊ばれて、成長がないのよ英は」

…そんなのわかってるよ。
僕自身が一番わかってる。
けれど僕にだって、今はああして微笑んでいる白亜様が、僕の知らない大きな暗闇を抱えていることくらいわかるんだ。
それはきっと『王妃の日記』に関係している。

『王妃の日記』
『王妃の日記』

吸血鬼であれば当たり前に学び、もはや夜の世界の常識となっている歴史書。
幼いころから数ある学問の一つとして、ただなんとなく勉強してきたそれについて知識を、今の僕はこれまでにないほど求めている。

初めてその名を耳にしたのは、そう、確かあの日だった。

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