◇第二十七罪:霧中の探究者−3/10−
side 零「きゃあっ…!」
理事長から言われて、優姫の様子を見に行けば叫び声が聞こえた。
「なんでもない…」という言葉にひとまず安堵すると、伸びてきた手が俺の服の裾を掴んだ。
「…ごめん、まだそこにいて…」
小刻みに震える小さな手。
「……どうした…?ユーレイでも見えたのか?」
「…自分の過去、真剣に思い出そうとしたの…。久々に…。そうしたら……」
なにか嫌なものでも見たのだろうか、裾を握る力が強くなった。
「…お前たちは、あたりに何もない吸血鬼がうろつくような場所に置き去りにされてたんだろ?……白亜は、何も知らないのか?」
「……白亜を疑いたくない」
「……とにかく、純血種である白亜と一緒にいたんだ。お前が吸血鬼かハンターに関係あることは間違いないと思う」
その時、ふとあることが浮かんだ。
『王妃の日記』。
協会の本部になら、確かあったはず。
「……協会の過去の報告書を本人が見れば、何か見つかるかもしれない」
あれを見れば、まり亜が言っていたこともわかるはず。
俺と壱縷と、白亜についての真実。
「どうする……?」
優姫に言った言葉を、俺は自分にも問いかけていた。