王妃の日記 | ナノ


 ◇第二罪:ナイト・クラス−7/7−
後ろには黒主白亜の短剣。
前には錐生零の銃口。
二つの対吸血鬼用の武器を向けられているというのに傍にいる従兄弟はこちらを見てもいない。

僕、絶体絶命――。

そのとき、後ろから苦しそうな息遣いが聞こえてきた。
黒主白亜――?
脈拍も呼吸も人間の正常よりかなり速い。
こいつ体調が悪いのか、と思った瞬間、僕の首を捕えていた腕がずり落ち黒主白亜が倒れるかに思えた――。
――のだが、黒主白亜は優雅に現れた枢様に抱きかかえられ、その腕の中で気を失っていた。

「その血薔薇の銃ブラッディローズ…おさめてくれないかな。僕らにとってそれは脅威だからね」

枢様は黒主白亜をさも愛おしそうにそのかいなに抱きながら錐生零を見やる。

「…それと、この痴れ者は僕が預かって理事長のお沙汰を待つ」

そして僕を見てそう仰った。
どうやら僕と暁は、一緒に罰を受けることになるらしい。
僕はともかく、暁って何かしでかしたっけ…?
…まぁいいや。

「そう…じゃ、後は頼むけど…」

枢様がお帰りになろうとしたとき、

「玖蘭先輩、白亜はこちらで引き受けます」

錐生零の不機嫌そうな声がした。

「いや…、錐生くん、白亜は月の寮で看病するよ…。後できちんと送り届けるから」

「白亜を一人でそんな所に行かせるわけにはいきません」

錐生はそう言うと、無礼にも枢様の腕から無理やり黒主白亜を奪い、そのままスタスタと去って行った。

「零、…ちょ…、あ、あの、枢センパイ、ありがとうございましたっ!」

「恐い思いをさせて悪かったね…優姫」

頬を赤らめる黒主優姫を残して、僕たちは月の寮へと向かった。
並々ならぬドス黒いオーラを全身から放つ、枢様に連れられて。

僕が十日間の停学を告げられ、枢様から鋭いビンタをいただいたのは、その数時間後の話…。

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