王妃の日記 | ナノ


 ◇第二十一罪:銀の残影−6/7−
side 零

恐かった。
白亜に会うのが。

昨夜はただただ心配で、白亜の無事だけを祈ってた。
純血種だろうがなんだろうが、白亜を失いたくなかった。

――"純血種"

今はそのことが俺の心に重くのしかかる。
頭ではわかっている。白亜は白亜だと。

白亜を玖蘭に渡した直後、香ってきた血と増えた純血の気配。
玖蘭と同じ、忌々しいほどのそれにどうしようもなく揺さぶられた。

会いたくて
会いたくて
だけど恐くて

吸血鬼になった白亜に
玖蘭の妹である白亜に
会うのが恐かった。

しかしそれよりも、白亜の顔を見たいという思いの方が強かった。

優姫に付き添う形で入った月の寮。
白亜の気配が近くなる。
勢いよく部屋に入った優姫の後ろで、
一呼吸置いてからその名前を呼んだ。

「白亜」

優姫に微笑むのはいつもの白亜。
何も変わらない、いつも通りの笑顔。
昨夜と違い、頬にはうっすらと赤みがさして
儚く、やわらかに微笑む姿。

安堵した。
生きてることに
無事な姿に
そして何よりも
白亜の笑顔を見て、嬉しく思う俺の心に。

――恐かったのは、白亜を憎んでしまうのではないかということ――

「……よかった……」

思わずそんな言葉が零れた。
自分でも珍しく、笑っていたと思う。

でも、俺の顔を見た白亜は

『あぁっ……』

手で口元を覆い、見開いた瞳から涙を流す。
そして何かを呟いて、そのまま気を失った。
まるで俺を拒絶するように
鈍器で頭を殴られた、そんな気分だった。

白亜…
何故…?

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