王妃の日記 | ナノ


 ◇第二十一罪:銀の残影−5/7−
『…あ……』

握った手の震えに気付いた優姫は首を傾げる。

「白亜?」

『あぁっ……』

零れ落ちる涙は止まらなかった。
ぽろぽろと、ぽろぽろと流れ落ちる大粒の雫。

戻った記憶が心を抉る。
涙は、止まらない。

何故こんなにも……

『−−−っ……』

声にならない言葉を呟くと、白亜は枢の腕に倒れこんだ。

「「白亜!!」」

「……優姫、錐生くん、心配をかけたね。白亜の体は徐々に回復しているよ。でもまだ吸血鬼に戻ったばかりで不安定でね。悪いけど出直してくれるかな。白亜がもう少し落ち着いてからゆっくりと…」

「枢センパイ!白亜は本当に大丈夫なんですか!?」

詰め寄る優姫に枢は苦しげな微笑を返す。

「大丈夫だよ優姫。心配しないで」

「でも…」

「優姫」

零の声に優姫は振り向いた。

「行くぞ」

「あ、ちょっと零…!」

二人は足早に寮を出て行った。

「枢くん、白亜は急に何故…?」

「大丈夫ですよ、理事長。僕は白亜を部屋に連れて行くので今日はここで…」

「そう、か…。何かあったらすぐに連絡してね」

「わかっています」

枢は意識のない白亜を抱き上げると応接室を後にした。

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