王妃の日記 | ナノ


 ◇第二十一罪:銀の残影−4/7−
「ここに来るの大変だったんだよー。優姫と錐生くんが付いてくるって聞かなくてさぁ。二人を撒くのに苦労して…」

おどけた様に話す理事長。
零の名前を聞いて、私の心臓が大きく鳴った。
枢はそれに気付いて抱いた肩に力を込めた。

「枢くん、白亜の体調が戻った後のことなんだけど…」

「夜間部への転籍手続きをお願いします。それから寮の移動も」

「白亜もそれでいいかい?」

『もちろんよ。元々初めから夜間部に入ることも考えていたし…。それに私は吸血鬼、普通科にはいられないわ』

「そうだね。すぐに手続きをしよう。陽の寮の君の荷物も後で運ばせるとして、先にこれを渡しておくよ」

理事長はそう言うと懐から見慣れた短剣を取り出した。

『アテナ…』

両手でそっと受け取り大事に胸に抱く。
身体の一部のように馴染んだ私の武器。
慣れ親しんだ柄の紋章になぜ気付かなかったのか。
今まで何も知らずに使ってきた、巡る因果、廻る運命…。

その時だった。
――バァァァアン

「白亜っ!!」

突然大きく扉が開き、優姫が部屋に駆け込んできた。
そのまま勢いよく私の前に座り込んで手を握る。

「大丈夫!?本当に大丈夫なの!?」

『優姫!?どうして…!?』

「理事長の後をつけて来たの!私たちも白亜に会いたかったのにダメだって言うんだもん!でも…よか…た……、白亜、生きてる…。心配で眠れなかったんだから…!!」

『ごめんね、優姫……ありがとう』

すすり泣く優姫を力一杯抱きしめた。

「優姫、月の寮にまで来るなんて…」

驚き呆れたような理事長を優姫はキッと睨みつけた。

「理事長だけ白亜に会うなんてずるいです!それにちゃんと護衛として零も連れてきましたし!」

優姫の言葉に顔を上げた。

「白亜」

私の視界に入ったのは

「……良かった……」

安堵した表情の

銀の髪

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