◇第二十一罪:銀の残影−2/7−
『枢、』「何?白亜」
欲するままに枢の血を飲み、やっと落ち着いた心と身体。
再びベッドに身を預けて隣に腰掛ける枢を見つめた。
『皆、きっと心配してるわね…』
会いたかった。
会いたかった。
会って、ごめんねとありがとうを言いたかった。
けれど…
「それなら大丈夫だよ。理事長には藍堂に言伝を頼んでおいたから」
枢の言葉に安堵した。
きっとすごく心配をかけてしまったに違いない。
本当なら今すぐ駆け出して会いに行きたかった。
でも、恐かった。
私の罪の証、無慈悲な運命を目の当たりにしてしまうのが。
『…英にもお礼を言わなくちゃ。彼が枢を呼んできてくれたんでしょう?』
「そうだね、僕も感謝しているよ」
『月の寮の皆は大丈夫?急に純血の気配が増えて混乱しているんじゃないかしら?』
「大丈夫だよ、一条に執り成すよう言っておいたから。白亜、君はそんなこと心配しせず今はゆっくり体を休めて。血もまだ足りないはずだよ」
『でもこれ以上は枢が…』
「じゃあ今はせめて……」
枢はそう言うと、私の唇にキスを落とした。
それは唇から首筋へ、鎖骨、心臓へと下っていく。
枢の唇は背中へと回り、そこに咲き乱れる青紫の一つ一つに口づけた。
ただ触れるだけのキスなのに、鼓動はだんだんと早まり身体の中心はゆるやかに疼く。
痛みを取るためのそのキスたちは、あまりにじれったくて。
『……ぁっ……』
肌を滑る指先が、肌を伝う唇が、ひどく久しぶりで思わず出てしまった声。
枢はくすりと笑って乱れた私の服を整えながら言った。
「続きはしばらくお預けだね。君の体が元に戻るまで」
枢は弧を描いた口端をそのまま額に寄せる。
『かなめ…』
「白亜、そんな顔をされたら僕も我慢できなくなるよ」
『だって…』
「いいから、もうおやすみ」
優しいキスを残して枢は静かに部屋を出た。
眠りの魔法をかけられて、重くなった瞼は再び閉じていった。