◇第二罪:ナイト・クラス−2/7−
白亜は十年前の"あの日"、私と一緒に理事長に引き取られた女の子。同性の私でも見惚れちゃうほどの美人。
そして、風邪一つ引かない私と違って昔から体が弱い。
もう一人の<
「白亜!起きてていいの?」
確か、今朝から熱があったはず…。
『大丈夫よ。それより零、出待ちの警備なら私もするって前から言ってるのに』
「お前にそんなことさせられるか。すぐぶっ倒れるに決まってる。それより熱、下がってないだろ」
零の言葉を聞き、すぐに白亜の額に手を当てた。
――熱い。
「白亜〜、まだ熱あるじゃん!」
『…気分はいいもの』
反論する白亜を、無理やりソファーに座らせた。
「白亜、無理はダメだよ。錐生くん、デイクラスとナイトクラスを共存させるための<守護係>は君たち三人にしか任せられない」
理事長は言った。
「…まあ…雑用ばっかだし、徹夜だし憎まれるし報われないし、イヤな役目だけどね…。でも、可愛い義息子と愛する義娘達にやらせるならボクも心が痛まないし」
バキッ!!!
零は理事長の机を割った。
「あんたの義息子になった覚えはない!」
その目は本気だ。
よほど理事長と親子になるのがイヤなんだね、零…。
「おい、白亜、優姫、お前たちは本当に黒主理事長の"義娘"なんだから、何か言ってやれよ」
「うーん…でも… 夜間部はまあまあ普通科とうまくやってると思うよ?ねっ?白亜?」
『そうね、思っていたよりは…。今のところたいした問題も起きてないし』
「うん、私も協力できてうれしいなっ」
にっこりと、白亜と目を合わせる。
「何ていいコたちだ オトーサンはうれしいよっっ ボクの平和主義を理解してくれるのは白亜と優姫だけだよ…!ボクはね!?大昔から闇で繰り返される人間対吸血鬼の争いにピリオドをうちたいんだっ!そして若い『彼ら』に柔軟な心と持ち前の頭の良さで二つの種族の架け橋に……」
理事長は演説を始め出した。
始まると長いんだよね、コレ……。
三人で顔を見合わせる。
「見回り行ってくる。あとはまかせた」
いちばんに逃げたのは零だった。
…ずるい。
私も退散しよっと…。
「ごめん、白亜、あとよろしく…」
『零、優姫…』
――あとで覚えておきなさいね…。
白亜の目がそう言っていた。
うぅ、あとが怖い。
「い、いってきまーすっ」
こういう時は逃げるが勝ちと、私は窓から飛び降りた。