◇第十六罪:罪の鎖で繋ぐ絆−4/6−
枢は閑の胸から、閑の心臓を引き抜いた。私は心臓を失った胸にアテナを深く突き刺す。
閑が滅びるのをより確実にするため。
純血種を殺めるのは並大抵のことでは出来ないから。
千々に引き裂かれても生き続ける者もいるくらいに……。
倒れ込む閑の身体を枢がそっと床に横たわらせた。
「……貴方の命は無駄にはしません……。貴方が本当に憎んでいたものを、僕らが必ず滅ぼしましょう……。僕達純血種を、この世界を、狂わせたものを……」
『閑……、きっと、約束するわ……』
目的は同じなのに、私達はこうして奪い合うことしかできなかった。
でもそれが、吸血鬼というモノだから……。
か細い声で閑は言った。
「純血種を喰らった純血種……。お前たちの行く先は……真の暗闇しかないぞ……枢……、白亜……。」
『ええ……』
「わかっています……」
そう言って立ち上がった枢の白い制服は真っ赤だった。
私のドレスもそれに劣らないほど血で染まっているはずなのに、全く色は変わらない。
身に纏う真紅がこの罪と同化していた。
まるで初めから、罪に染まっていたかのように。
「白亜、そろそろ行こうか……」
『ええ、枢……』
最後にちらりと見た閑の顔は、心なしか微笑んでいるようだった。
閑の思いは枢が受け継ぎ、きっと果たしてくれるはず。
貴方達の罪は、すべて私が持っていくわ。
だから、どうか
安らかに
さよなら……
狂い咲き姫……。