王妃の日記 | ナノ


 ◇第十六罪:罪の鎖で繋ぐ絆−3/6−
床に大きな血溜まりができる。

「……あまり驚かないんですね……」

「……ああ……。こうなることは解っていた……」

閑は自分の胸を貫いている枢の手を冷静に見ながら淡々と語った。

「私は、あの娘が欲しかった。いずれ目的を果たす時に囮として使うため……。白亜、お前でも良かったのだがな……だがしかし、お前が私の言葉を聞く訳がない。あの娘を…枢、お前への刺客にして命を獲ろうと考えていた…」

『そうして優姫も枢も手に入れようと考えていたのね……』

「その策が成功する確率は低かったがな…」

自嘲するようにふっと笑った閑の体が僅かに傾いた。

「わかりますか……」

枢の声が冷たく響く。

「貴女の心臓を握ってます。今……抉り出すとどうなるか……想像できますか……?」

私もアテナを閑の喉に食い込ませる。
赤い血が一筋流れた。

「……私はもう抵抗できん……。このゲームの敗者には"死"あるのみ……」

「……閑さん……、貴女の命、僕がいただきます」

『私も……。あの子を守る、力とするために……』

私は閑の手をアテナで十字に切った。

「白亜、君まで罪を犯すことはない」

『いいえ、枢。……貴方が堕ちる罪なら、私も一緒に塗れたい……』


この血を飲めばどうなるか……私がいちばん解ってる。
この命がもうすぐ尽きても、いえ、だからこそ、罪の鎖でだけでも貴方と繋がっていたい。

枢は閑の首に牙を埋め、私は掌に溢れる血を啜った。

赤い絆が、私達を結ぶ。

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