王妃の日記 | ナノ


 ◇第十六罪:罪の鎖で繋ぐ絆−2/6−
side 白亜

「ここ、僕が学園に来て最初にあてがわれた部屋なんだ」

『知ってるわ』

苦い思い出の残る今は物置と化した部屋。
月明りを背に私と枢は時を待っていた。
廊下を隔てた向こうの部屋では何度も銃声が響く。
館中に満ちる閑と零の血の匂い。


まだ……
まだ、待つしかない。


今にも駆け出したい身体を必死に押さえる。
優姫がこんなにも危険に晒されているのに…。
でも、ここで私が出て行けば全てが台無しになってしまう。
優姫は零が守ってくれているから無事のはず。
だけど不安で仕方がなくて枢の手を強く握った。
ぎゅっと、何も言わずに握り返されるぬくもりに心は次第に落ち着いていく。

そう、これは勝たなければならないゲーム。
狼狽えてなんていられない。


ひたり、ひたり、ひたり
ぽたっ、ぽたっ、ぽたっ


その足音と共に濃くなる血臭。
こちらの部屋に現れた閑は白い着物を朱に染めていた。

『ひどい血ね、閑……』

「対吸血鬼用の銃はこれだから厄介だ。僕たちの異常な治癒力もかなり制限される」

「……玖蘭の坊や……それに、姫か……」

『くす…、"姫"だなんて呼ばれたのは随分久しぶりだわ』

閑はしゅるり、と血塗れの帯を解く。
同時に私たちの手も離れた。

『………閑』

素早く隠し持ってたアテナを閑の首元にあてがった。
枢は彼女の後方に回りすばやくその身体を包み込む。

「何の真似だ……」

『忠告したはずよ、優姫に手を出したら許さないと……』

「ゲームの決着をつけようか、閑…」

枢はその手を彼女の胸に突き刺した。

116

/
[ ⇒main]
page:




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -