王妃の日記 | ナノ


 ◇第十五罪:純白×真紅×漆黒−8/8−
side 白亜

零は意外にもワルツが上手で私を少し気遣うように優しくリードしてくれた。
……初めて踊ったのになぜこんなにも懐かしく感じるの……?

曲が終わると零は行ってしまった。
きっと、彼女の元へ。

今のダンスは、さよならの代わり……?
……そんなこと、させないわ。


テラスへ向かうとそこには枢だけがいた。
優姫の姿は、ない。

『枢、優姫は?』

「行ってしまったよ」

『……なぜ?何故行かせたの!? 閑の狙いはあの子なのよ!?』

「優姫が自らの意思で決めたことだよ…」

『……っ』

優姫が自分で決めた道なら私は黙って見守ると誓った。
……だけど…

『もしあの子が閑の手に渡ったら……』

声が震えて先の言葉が紡げない。

「そんなことさせないよ」

『……枢。……私も、一緒に行くわ』

「……白亜」

『お願い……行かせて』

懇願するように言えば少し強引に腕を引かれ、そのまま枢に抱きしめられた。
こんな時なのに不覚にも胸が高鳴ってしまう。

「僕の傍を離れないと、約束して白亜」

『ええ』

「……離さないよ、君だけは」

最後の言葉は鼓動に紛れて聞き取れなかった。
私を包む腕が、吐息が、ぬくもりが、切ないくらいに愛おしい。
このゲームに勝っても負けても、貴方とこうして過ごす時間はおそらくこれが最後。
これが最後。
私の体は、もう持たないから。
だから。

『……枢』

「何?」

『……もうすこしだけ、このまま……』

「……うん」

あと少しだけ、このひどく優しい腕の中で、
最後の安らぎを感じていたかった。

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