王妃の日記 | ナノ


 ◇第十五罪:純白×真紅×漆黒−6/8−
side 白亜

久しぶりの枢とのダンス。
まるで呼吸をするかのようにステップを踏む、懐かしいこの感覚。
あの頃もよくこうやって……

甘い懐旧に浸っていると音楽が鳴り止んだ。
一瞬。一瞬だけ、枢と見つめ合う。
そして私たちはゆっくりと離れ、お互いに背を向けて別れた。


枢が長手袋を用意してくれてよかったわ。
これがなかったら内出血の痕が丸見えだもの。
ドレスから見えてしまう背中の痣は星煉に頼んでコンシーラーで消してもらった。
しっかりメイクもしたから顔色が悪くなっても誤魔化せるはず。

そんなことをホールの端でぼんやりと考えてた。

ふと枢が向かったテラスの方を見ると、白い影が二つ舞っていた。
一つは枢、もう一つは、優姫。

あの子に良く似合った可愛らしい純白のドレス。
長い後ろの裾が躍るたびにふわりと広がる。
きっと枢が贈ったのでしょうね。
彼の制服と同じその色を。

わざと音楽をはずしてゆっくりと踊る二人。
純白と純白はどちらがどちらかわからないほど溶け合って、ホールと区切られたその空間は二人だけの世界。

私が入り込む隙なんて、全くない。
わかりきってたことなのに胸がひどく締め付けられるのは何故……。
因子の暴走は治まってるはずなのに
胸が、痛い。


「白亜……?具合、悪いのか?」

突然目の前に現れたのは零。

私は今どんな顔をしていたのかしら。
……きっと般若みたいな表情に違いない。
何よりも大切な妹に嫉妬する、浅ましくて醜い女の素顔。

『ううん……何でもないのよ』

「そうか。それなら良かった。……体が平気なら、一曲踊らないか……?」

零がダンスを誘ってくれるなんて……。

『くす……くすくす』

「……なんだよ」

あまりに意外で、驚いて、そして嬉しくて
つい笑ってしまった。

『なんでもないわ。……では、ぜひ…』

差し出された手に、そっと手を重ねた。

112

/
[ ⇒back]
page:




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -