王妃の日記 | ナノ


 ◇第十五罪:純白×真紅×漆黒−5/8−
side 優姫

制服を整えて深く息を吐いた。

まり亜さんが枢センパイを欲するのはわかる。
純血種の血肉には特別な力があるらしいから。
でも、彼女が私や白亜を欲する理由がわからない。
ただの人間の私たちを……何故?
それでも、私の選ぶ道は一つしかない。
それで零を救えるのなら。

鏡の中の私と目を合わせ、最後の覚悟を決めた。
迷いは、ない。


「準備できた?優姫……え?舞踏祭に制服でいくの……?」

ノックをして入ってきた頼ちゃんは、可愛くドレスアップしていた。

「うん…、理事長から会場の警備、念押しされてるんだ」

「ひどいお義父さまね……。せっかく優姫にコレ、届いているのに」

頼ちゃんから渡されたのは長方形の白い箱。
添えられたカードには枢センパイの名前が記されていた。


◇◇◇


枢センパイから貰ったドレスを着て、ちょっとだけ髪も頼ちゃんにアレンジしてもらって舞踏祭の会場へと向かう。

フィッシュテールの真っ白なドレス。
こんなのを着るのは初めてで、なんとなくそわそわする。

ホールに入ると、その中央で一組だけが踊っていた。
会場にいるすべての人の視線がその二人に注がれている。
耳に心地いい、ゆったりとした円舞曲の中で舞うのは純白と真紅のコントラスト。

枢センパイと白亜だった。

まるで世界に二人きりしかいないように互いを見つめ合う二人。
完成された絵画のような光景に誰もが魅了されていた。
白亜のホルターネックのロング丈のドレスはとても細身で、細い体のラインを一層綺麗に見せていた。
アシンメトリーの裾がステップを踏むたびにひらりと揺れる。
白く長い手袋が夜間部の純白の制服と溶け込んで二人の境界がわからない。
結った髪に薔薇を挿し、艶やかな紅を引いた白亜はいつもよりずっと大人っぽく見えた。

いつも一緒にいる私でも溜息が出る。

嫉妬や羨望といった感情さえも通り越してしまうほどの圧倒的な美しさ。
二人が踊るその場所は誰にも侵すことのできない聖域のように見えた。

曲が終わると割れんばかりの拍手が起こる。

「美しいわ…」
「玖蘭様も白亜様も素敵っ」
「本当、お似合いの二人よね」

普通科の女の子が口々に囁いていた。

二人はダンスを終えてもう一度眼差しを交わした後、枢センパイはテラスへ、白亜はホールの端にそれぞれ歩いて行った。

枢センパイにドレスのお礼言おうと、私もテラスへと向った。
そして、これから私がすることに対しての謝罪も。
独りよがりの行動でしかないけれど。

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