◇第十四罪:クイーンは不敵に微笑む−6/8−
side 枢「その姿……その名前……」
誰もいない談話室。
読書をする"ふり"をしていると彼女が音もなく現れた。
「どういうつもりか……最初は答えに迷ったよ」
貴女をこの学園に誘い込んだのは僕だけれど、まさかそんな姿で来るとはね…。
「……あら、あなたを立てたのよ」
少女は教室とは打って変わって冷めた表情で口を開いた。
「悪趣味だな。貴女は遊びたかっただけだと思うけれど」
「ただの遊び?あなたはいつの間にそんな良心的な物の見方をするように育ったのかしら」
――同類のくせに。
うっすらと笑みを浮かべながら彼女はそう言った。
「――そういえば……あなたはなぜ、黒主白亜をそのままにしているの?あの子がいる場所は"こちら"でしょう?」
「……彼女が今の場所を望んでいるからですよ。――それに……彼女を再び絶望の底に突き落としたくはない……」
「そう……。でも……あの娘の限界は近いわよ……?」
言いたいことだけを言って彼女はくるりと背を向け、部屋を後にした。
付き従うのは銀の髪の青年。
―――あの娘の限界は近いわよ―――
閑の言葉が木霊する。
出来ることならこのまま、安寧な世界で過ごしてほしい。
何の苦しみも悲しみも思い出さないまま……。
でも僕は気が狂いそうだ。
君のいない世界は虚無の闇。
白亜……
そう小さく呼びかけても答えてくれる君はいない。