◇第十四罪:クイーンは不敵に微笑む−4/8−
side 英僕と錐生は理系棟の屋上に来ていた。
ここなら死角になって女の子たちにも見つからない。
「紅まり亜は"あの女"と関わりがあるのか」
「……"あの女"って……?」
答えがわかっているのに、僕はあえて尋ねる。
「……緋桜、閑」
錐生の声は苦々しさに満ちていた。
「不躾なヤツだ。仮にも我らが"純血の君"たる方の一人を呼び捨てとは―――。だが仕方ないか……お前の肉親を惨殺した方だからな」
普通なら錐生みたいな人間に純血の君のことを教えたりなんかしない。
だがこいつは例外だ。……それに僕もこいつに聞きたいことがあるし。
「まあいい……。『紅』は『緋桜』の遠い昔の遠い親戚……それだけだが?」
「……四年間あの女の消息がつかめないのは以前と姿が変わったからじゃないのか?」
「…知らないよそんなの。それより重要なのはお前がどう感じているか……だろ。僕もそこが知りたいんだ。お前にしかわからない……。あの方との血塗れた"絆"がある……お前にしか」
錐生の顔色が変わった。
やっぱり本能ではわかってるんじゃないか。
「僕もひとつ、お前に聞きたいことがある。あの風紀委員の……」
僕はそこで言葉を区切った。
「……優姫か?」
「いや違う」
「白亜か?」
「そうだ」
錐生は眉間に皺を寄せた。
「白亜がどうした」
僕は、あの
本能が気安く呼び捨てにすることを許さない。
「その黒主…白亜……は、何者だ?」
「は?」
「いつから理事長に引き取られたんだ?家族は?」
「白亜は十年前、優姫と一緒に雪山にいたということしか俺は知らない。……なぜあいつのことを聞くんだ?」
「……そうか、十年前か……わかった」
「おい!」
叫ぶ錐生を残して、僕は地上に飛び降りた。