王妃の日記 | ナノ


 ◇第十四罪:クイーンは不敵に微笑む−3/8−
その時、突如"彼女"の気配がした。
零も素早く反応し振り向いた。

「そっちはだめだよ!!」

これは……拓麻の声。

「普通科がいる時間だから!まり亜っ!」

「大げさね。ちょっとカフェテラスをのぞきたいだけよ」

昼の校舎の中ではひと際目立つ白い制服。
拓麻に追いかけられるまり亜はちらりと零を見て、消えるようにその先へ駆けて行った。

「いや……ダメだよねあれ……。夜間部がなんで…。私行ってくる!」

『優姫!!』

私が呼んだのと同時に、零が優姫の手を掴んだ。

「あの編入生に近寄るな。放っておいてもあの副寮長がなんとかする」

『そうよ、優姫。それより……』

なんとか優姫の気をまり亜から逸らせなきゃ。
そう思いあたりを探る。
……ちょうどいい人物がいたわ

「零?白亜……?」

『あそこにいる彼の方をどうにかした方がいいと思うわ』

「彼って……」

「……やっぱりばれちゃったか」

「アイド…藍堂センパイ!!」

突然現れた英に優姫は驚いていた。
普通科の女子たちからは黄色い歓声が上がる。
零が珍しく自分から英に話しかけた。

「……少し……顔を貸してもらえませんか、藍堂先輩」

「へぇ……ちょうどよかった。僕の方も話があったんだ」

英はちらりと私を一瞥して、零と一緒に歩いて行った。

「ちょっと風紀委員、なぜ夜間部の方々がここにいらっしゃるの?」
「説明して!」

じりじりと優姫に詰め寄る女子たち。

「ちょ……皆さん落ち着いて!白亜、頼ちゃん、……私…逃げてくる!!」

優姫が駆け出すと、女子生徒達は優姫を追いかけて行った。

『優姫……!』

もしまり亜に遭遇したら……!
優姫を追いかけようとした途端、胸に鋭い痛みが走る。

『……っ』

「…白亜、貴女さっきから顔色が悪いわ」

『……私は大丈夫よ、沙頼。心配しないで』

今は具合が悪いなんて、言っている暇はない。

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