◇第十三罪:盤上に上がるクイーン−5/6−
side 英寮の廊下を歩きながら、暁が紅まり亜に関する調査書を読み上げた。
「紅まり亜は正当な手続きと誓約を経て編入してきた。…あとは生まれつき身体が弱いらしく今まで『夜の社交界』に出たことはない…これくらいか」
僕はずっと、教室での出来事を考えていた。
あいつが僕の頬に触れた時の、ゾクリとした感触。
あれは……
「特に変だとは思わないがな…。まぁ、恐いもの知らずだとは思う」
「……なぁ暁、"あの
「あの
「乱心の末姿をくらました純血種。『緋桜 閑』……だよ」
「……錐生家の事件のあと行方不明に…死んだとも言われているな…。残念ながら俺は会っていない。…それがどうかしたか?」
「いや……別に」
―――あれは……似ているんだ。
黒主優姫と一緒に月の寮を訪れた時、倒れる直前の
黒主白亜の気配に。
僕の心はもう真実に気付いているのかもしれない。
ただ、あまりに不可能な現実に
頭が追い付いていないだけで。