◇第十三罪:盤上に上がるクイーン−3/6−
「あちらは図書館なんですけどこの時間は閉まってて…。夜間部の方は寮の図書室を利用することになります。あ、そこが今日夜間部が使ってる教室です」説明しながら校舎を案内していると、まり亜さんは急にぴたりと歩みを止めた。
「どうしたんですか?」
「……優姫さん」
緊張しているような恥ずかしがってるような、ほんのりと染まった頬。
「本当は編入してきて恐いの……なんて言ったら信じる?身体の弱い吸血鬼なんて……きっと仲間外れにされるもの……」
おずおずと言うまり亜さんに、ちょっとびっくりして固まってしまった。
「あ、ホラ!やっぱり信じない」
「いえ!ちょっと意外で」
だって吸血鬼の彼女がこんなことを言うなんて……。
夜間部生はもっと自信家で堂々とした人たちばかりだから、吸血鬼は皆そうだと思っていた。
「あの…大丈夫と思いますよ。クラス長も副クラス長も優しいし…」
枢センパイや一条センパイなら彼女を放っておくようなことはしないだろう。
「それに、何かあったら私や理事長に言ってください。私の他に、風紀委員も二人いますし。助けになりますから」
「…風紀委員って、他に誰がいるの?」
「えっと、私の義姉にあたる白亜って女の子と、錐生零っていう目つきの悪い男の子です。白亜も身体が弱くて…ちょこっとだけまり亜さんに似てるから仲良くなれると思いますよ。だから安心して、まり亜さん」
そう言って笑いかけたら、ぎゅっと抱きつかれてしまった。
「ありがと…。私…あなたみたいなコ、大好き…!」