◇第十三罪:盤上に上がるクイーン−2/6−
side 優姫「優姫に頼みたいことがあるんだ。編入生のことなんだけど」
ある夜、理事長室を訪ねると突然そう告げられた。
「編入……生?」
「うん…本当はもっと前に来る予定だったんだけど、身体が弱くて山奥の別荘で今まで静養していたんだ」
その時、遠慮がちなノックの音が響いた。
「ああ、仕度できたかな。どうぞー」
「あの……こんばんは…」
扉から現れたのは、小さな純白のシルエット。
「……へ?ナイトクラス…!?」
我ながらまぬけな声を出してしまった。
「彼女は紅まり亜。紅さん、こっちはボクのムスメの優姫」
「え!? あ……よろしくお願いします…」
「……。美味しそうな方……健康的で……」
「こら!それはこの学園では禁句!」
理事長はめっ!という風に指を立ててまり亜さんを注意した。
やっぱり美味しそうなのかな、私って…。
「ごめんなさい。よろしくね、優姫ちゃん」
にっこりとやわらかく微笑むまり亜さんにつられて私も微笑みを返した。
まり亜さんって吸血鬼らしくないな…。
か細くて弱弱しくて可愛くて。
儚い感じが少しだけ白亜に似ていた。