◇第十二罪:散らばったピースをはめるのは誰−6/6−
side 白亜『ごほっ……ごほっごほっごほっ……』
洗面台に流れる水が朱に染まる。
どんどん多くなる血の量。
この身体の限界は近い。
私の未来は二つだけ。
枢の血を飲み吸血鬼に戻るか。
このまま人間として死を待つか。
――吸血鬼は血で相手の気持ちがわかるの?――
優姫の言葉が木霊する。
そうよ、優姫。
吸血鬼は血を吸うことで想いを満たす。
血はとても正直で、隠すことなく自分の想いを相手に伝えるの。
だから私は、枢の血を飲むことができない。
枢が他の人の血を吸っているのを見ただけで狂ってしまいそうなのに
枢が他の人を想っていることを直接知ってしまったら。
命よりも大切なこの恋心。
これが砕けてしまったら、きっと私も壊れてしまう。
だったらこの心を抱えて、終わりを静かに待つしかない。
鏡の中の愚かな女が青白い唇で嘲笑った。
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