王妃の日記 | ナノ


 ◇第十二罪:散らばったピースをはめるのは誰−5/6−
瑠佳は手を止め、じっとこちらを見た。

「私が勝手に口外していい事なのかはわからないわ…」

「頼む!」

数瞬の沈黙。そして。

「……真実よ」

瑠佳は資料を広げた。

「この公式の家系図にも、きちんと載っているわ。ほらここ」

瑠佳が指さした先は、枢様の横の"女"の文字。

「でも詳しいことは何もわからないのよ。お名前も、生きていらっしゃるのかどうかさえ……。十年前、ご両親と一緒にお亡くなりになったという話が有力ね」

「生年月日は?」

「記録によれば……私たちと同い年ね」

「……そうか」

まだこれだけで僕の仮説が本当だと決めつけるのは早い。
でも、やはりもしかすると……。

「もし生きていらっしゃれば、この方が『王妃の日記』をお継ぎになったんでしょうね……」

独り言のように瑠佳は言った。

「……え?」

「『王妃の日記』よ。『日記』は玖蘭家の女系女子によって受け継がれてきたの。母から娘へと」

「そういえばお前、昔からそういうの好きだったよな」

「自分たちの世界のことを知るのは大切なことよ」

誇らしげにそう言って、瑠佳は優雅に紅茶を一口飲んだ。

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