◇第十二罪:散らばったピースをはめるのは誰−3/6−
side 暁このごろ英は調べ物ばかりしている。
毎週寮長に提出している『月の寮改善案レポート』も書かないまま、(まあ、それはあいつが勝手にしているだけなんだが)
今日も部屋で様々な本や資料を読み漁っていた。
「なあ、暁……」
英は手元の古い文献から顔を上げて言った。
「なんだ?」
「玖蘭家に姫がいたって話……知ってるか?」
「……ああ、確か、枢様の妹君にあたる……」
幼い頃、耳にしたことはある。
だが、その姫について詳しいことを知っている者はなく、ただの噂ではないかと言われていた。
「その姫のことはただの噂じゃないのか?」
「わからない…。そのことについてずっと調べているんだ。でも資料が少なすぎる」
お前が最近調べているのはそれか。
「じゃあ瑠佳に聞いたらどうだ?その手のことに関してはあいつが一番詳しい」
俺がそう言うと、英はいきなり椅子から立ち上がった。
「そうか、瑠佳がいたか!」
その言葉も言い終わらないうちに、英は疾風のごとく部屋を出て行った。
…英、お前が何をしようが構わないが、"片付ける"という言葉を覚えてくれ。
数十冊の本と無数の資料で雑然としたテーブルを見て、俺はため息を一つついた。