◇Debutante◇
「珠姫、そろそろ行こうか」
気付くとお兄様が私に手を差し伸べていました。
ぐわっぎしゅっぎゃおすっっ
きゃぁぁぁぁぁああァァアアア!!!
……ふー、未だに不意打ちは慣れません。
お母様はもちろんお父様が、そして優姫は李土おじたまがエスコート。
そして私はお兄様にっ!
あぁ、お兄様の腕……じゅるり。
ハッ!!いかんいかん、ここで舐めちゃあいかん!!
私たちがホールに入った途端、静まり返る場内。
次々に頭を下げる貴族たち。
おぉー壮観だなぁ。
これだけの吸血鬼って初めて見るしねー。
ビクつくゆっきーを可愛いなぁなんて思うお姉ちゃんは末期ですか?
「皆さん」
お父様が口を開いた。
「今日は僕たちの娘たちを連れてきました。姉を珠姫、妹を優姫と言います。二人ともこのような社交の場は初めてですが、どうかこれから温かく見守って下さい」
私と優姫はドレスを摘まんで膝を折った。
「「皆さん、初めまして。どうぞよろしくね」」
よしっ!何回も練習した甲斐あって完璧っ☆
段々と話し声を取り戻してゆく会場。
十数名の顔見知りの貴族たちが次々に挨拶にやってくる。
その中の一人、支葵のおじ様に連れられてやってきたのは……
「珠姫、」
「千里っ」
千里たぁぁぁぁぁん!!!
タキシード!!タキシードいいよ!!
青のリボンがよく似合うっ!!
「久しぶり。最近あんまり会えなかったから寂しかった…」
んまーこの子はこんなに可愛いこと言っちゃって!!
お姉さんを萌え殺すつもりっ!?
「私も、千里に会いたかった」
なーんて言ったら隣のお兄様から不穏なオーラが。
お兄様、やきもち?嫉妬?ジェラシー???
珠姫は嬉しいですっ!!
「珠姫、今度俺と「千里っ!!」……げ」
あ、李土おじたまが来た。
千里たん、アーメン。
おじたまは千里たんLOVEなのよねー。
普段あまり会えないから(おじたまが家にばっかり来てるからなんだけど)千里たんを見かけたら即どこかに連行しちゃうのよ。
「父さん、俺まだ珠姫と話したい…」
「何を言ってるんだ千里。久しぶりに会ったんだからこっちに来い。それに息子とは言え珠姫は渡さんぞ。僕のものだからな」
「……」
嗚呼、千里たんの目がウザいって言ってる。
でもね千里たん、私にはどうにも出来ないんだよ…。
力になれなくてごめんね☆
―3/6―