◇Debutante◇
やってきました、待ちに待った夜会っ!
主催はなんと、拓麻さんちこと一条家ですっ!
「可愛い姪っこ達の夜会デビューが一翁主催とは…気に入らんな」
「私だって嫌よ。でもあのクソジジ……一翁が是非にって聞かないもんだから…」
お母様はちょっぴりご機嫌ななめ。
一翁大っ嫌いだからねー。私は一条の夜会だっていうからにんまりしたんだけどっ。
だって拓麻に会えるじゃない!
それに今日の夜会はかなり大規模なものらしいから、主要な貴族はほとんど出席する=英と暁にも会える!!
千里たんはもちろん、拓麻も小さいころから一緒に遊んでいたんだけど、それ以外の夜間部メンバーには会ってなかったの。
でもこれでコンプリート出来るわ!
ぐふっ。
ぐふふふふふww
あ、因みに今日の私とゆっきーは色違いのドレスなの。
私がホワイトパールで優姫がピンクパール♪
クラシカルな雰囲気で一見お揃いだけど、デコルテの刺繍やパフスリーブの形なんかが微妙に違うのよ。
お母様とお兄様とおじたまが三人でバトル……じゃなかった激しい意見交換を繰り広げながらやっとこさこれに決まったのさ。
その間お父様は髪飾りや靴など(ご自分の好みの物を)さりげなく決めていださいました☆
意外とお父様ってしたたかよね。
煌びやかなホールには大勢の吸血鬼の気配。
それを感じて優姫は少し恐がってる様子。
「珠姫…」
「優姫、大丈夫よ?」
「そうだよ優姫。僕もずっとそばにいるからね」
「お兄様…」
「待て枢、それは僕の役目だ」
「お兄様、それは父親である“僕の”役目でしょう?」
「あら悠、私はほったらかしなの?」
「樹里、そんなわけないよ」
なーんて言ってる間に
「これはこれは、皆様お揃いで。本日は当家の夜会にご出席下さり誠に恐縮でございます」
一翁登場――――!!!
「一翁」
「こんばんはっ」
私と優姫は一翁に駆け寄りました。
それはもう最上級の笑顔で!
まぁそれにはちゃんとした理由があるんだけどね。
「これはこれは姫様方。お久しゅうございます」
私と優姫は笑いを堪えた。
一翁の顔を見るたびにそうなのよっ!
優姫は我慢できずに震えながら下を向く。
「優姫様?いかがなさいました?」
「お気になさらないで、一翁。優姫は初めての夜会で緊張しているだけなの」
なんて言う私も唇の端はピクピクしている。
え?何でかって?眉よ眉!!
一翁の眉は私と優姫が五歳の時にいたずらして全部引っこ抜いちゃったのっ!
もちろん記憶は消したから、一翁は誰がやったかなんて覚えてないんだけどね。
拓麻の話によるとある夜、突然お祖父様の叫び声が屋敷中に響き渡ったそうな……ww
それからというもの私と優姫は一翁の顔がまともに見れないのですっ。
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