◇めくるめく結婚生活編◇
「はぁ…」
先ほどとは違い、疲労のこもった溜息を吐く。
太陽が昇りきった寝室は完璧に遮光されていて、私達の目にも薄暗いと感じる程度。
ベッドサイドのランプが仄かに付いているだけの…まぁ言ってみれば良いムードなわけですよっ。
四人は泊まっていくと(約一名は駄々をこねて)言っていたので今は客室にいる。
華月も自分のお部屋で夢の中
さぁこれで邪魔者はいなくなったわ!
やぁっと枢と二人きり!!うぷぷぷぷ。
「どうしたんだい、珠姫。溜め息なんて吐いて」
たっぷり積まれた枕やクッションに身を預けて隣の枢に寄り添って見上げれば、これだけ一緒に過ごしてもまだときめいてしまう端正な顔立ち。
いやだからっ!
不意打ちで微笑むのは反則ですってっ!!
「枢…。ううん、なんでもないのよ。ただ、華月はいつのまにあんなに大きくなったのかしらって思ってね」
これは本音ねっ。
大きくっていうより、いつのまにあんなしたたかに成長したんだかって思うと……。
……母は泣きたくなります。
「小さい時の君にそっくりだよ」
「ふふ、私もびっくりしちゃうくらい」
本当にね!
「…だからかしら。ちょっとやきもち妬いちゃった」
「…珠姫?」
「だって私、あれくらいの年には枢に恋をしていたから…」
実際は生まれてすぐ…いや、生まれる前からだけどね!
「それに最近、私の特等席をあの子に取られるようになっちゃったし」
あえてちょこっとだけ唇を尖らせて独り言のように言えば、枢が頭上でくすりと笑みを零したのが分かった。
「本当に…君は…」
落ちてくるのは啄ばむような口付け。
「娘にまで嫉妬するなんて」
「…呆れちゃった?」
「いや、可愛すぎて……」
―――食べてしまいたくなるよ…。
―7/9―
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