◇めくるめく結婚生活編◇
――翌日――
『―――というわけなのよ〜、更ぁ〜!』
『貴女の娘なら当然じゃない。そこまで腹黒いところまでまぁ母親そっくり』
『ほほほ、腹黒だなんて更さんだけには言われなくないわぁ』
『それよりも、何故私が貴女の愚痴を聞かなくてはいけないのかしら?いきなり電話なんてしてきて迷惑もいいところだわ』
『そんなの私の本性を知ってるのが更ちゃんだけだからじゃない!』
『“ちゃん”なんて付けないで頂戴。気持ち悪い、虫唾が走るわ。貴女の本性なら優姫さんも知っているでしょう。そちらに電話して』
『つれないのね。私の大親友である更さんに枢との結婚生活の近況報告をしたかっただけなのに』
『……それは嫌がらせと捉えていいのかしら?』
『あれ?よくわかったわね』
『今度貴女のバッグに納豆詰めてあげるから覚悟なさい』
ガチャ。ツーツーツー
『え、ちょ、更ー!!まだ話足りないのに!!この身勝手女王めっ!!』
てかバッグに納豆詰めるって…そんなことしたらバッグがネバネバまみれの納豆臭ぷんぷん放つ史上最悪兵器になっちゃうじゃん!!
私が納豆嫌いなの知ってての暴挙ね!!
ガシャンと受話器を戻してカウチに乱暴に身体を預ける。
目をつぶってしばらくすると、ぽふんと軽い重力が身体にかかった。
「おかあさまー?」
膝の上に乗って来た娘は我ながら見ても私にそっくり。
うん、これはもうドッペルゲンガ―並みですね。
はぁ…黙っていればこの上なく可愛いのに。
「はづきねー、おとうさまとけっこんするの。だからおかあさま、おとうさまとリコンして?」
こ の 子 は
こんな天使のような顔で何を言っとるんじゃぁぁあああ!!!
この子は私を超えるかもしれないわ!
嗚呼なんて恐ろしいっ!
でも私は玖蘭珠姫!
今までこの猫かぶりスキルと頭の良さ(悪知恵ともいう)で数々の難局を乗り越えてきた華麗乙女よっ!
たとえ我が娘であろうとも容赦はしない!
私の恋路を邪魔する奴は白リリィに蹴られて吹っ飛んじゃえ!
「それは出来ないわ、華月。お父様とお母様は愛し合ってるもの」
「そうかー、ざんねんだな、おかあさま」
ふふん、やっぱりまだ五歳児ね。
私に勝とうなんて早い早い。
「おかあさまとはあらそいたくなかったのに…。でもしかたないよね。……こうなったら、れっつ☆りゃくだつあい」
おいおいおいっ!
それはウインクをしながら言うセリフじゃあないよ!?
それも小首傾げながらなんて!
すっごい可愛いけどもさぁ!
「うふっ、らいばるどうしね、おかあさま」
…恐ろしい子!!!
―3/9―