※ヒロイン幼児退行化
俺が中身が子供になってしまったなまえの面倒を見初めてもう一週間。なまえはまだ元に戻らねぇ。
「なあなまえ、俺の名前は?」
「まさむね!」
「…だよな」
屈託のない無邪気な笑顔に癒されるものの、そろそろ俺の知ってるなまえに会いてぇっつのも本音。けどこの幼児なまえもなまえなんだ、俺が面倒見てやらなきゃだろ?一応俺様はなまえと恋仲なんだしよ。
「ん?」
ゴミ箱に、俺様の大事な銃が入ってやがる。
「おい誰だコレゴミ箱なんかに入れやがった奴!」
「それ、いや」
「な…、なまえだったのか?」
「それきらい。まさむねいなくなるときいつもそれいっしょ。きらい」
ちょっとしたガキのヤキモチかよ。なんだ、可愛いとこあんな。
「おうおう、よくわかった。だけどよ、マサムネ様の銃を捨てちゃいけないぜ?それに、あぶねぇだろ?持っちゃダメだぜ」
「…わかったー。ごめんなさい、まさむね」
どうせなら身体もちっちゃくしてやって欲しかった。いや、俺様の我が侭とかでもあるんだろうけどよ。けど銃を捨てるたぁ…、危険だな。この身体でそういう考えだと何起こすかわかったもんじゃねぇなぁ…。
ある日ちょっと野暮用で出て来て帰ってみりゃあ俺様の相棒の鴉がギャアギャア鳴いてやがる。うるせぇ。
「おい何鳴いてやが……、なまえ!?何してやがんだお前!?」
「こいつ、いや、きらい。まさむねとるから。いなくなっちゃえ!」
バシバシと石をぶつけるなまえの腕を急いで抑えつけた。
「なまえ、ダメだ」
「はなしてまさむね!」
「アイツは俺の相棒だ!なまえ、生き物の命は盗っちゃなんねえんだ、わかるな?」
よくわからない、みたいななまえの手を引いて俺様の部屋へ。
「なまえ、あのままじゃアイツ死んでたんだぞ?」
「え…?わかんなかった…。ごめんなさい…」
「痛かったってよ。アイツ恐くねぇから、謝って来いよ」
「うん。ゴメンねー、カラスさーん」
ブンブンと手を振るなまえは子供そのものだった。なのに身体は大人な訳で。力がある分こええもんがあるな…。
「マサムネ様」
「お、どうした?」
ちょうど来た宿の女と話をする。なまえは鴉に夢中だと、俺は思い込んでいた。
女は俺に気があるらしく、妙に甘ったるい声で話しやがる。此処は遊廓かっつに。適当に追っ払ったらなまえが俺の隣に座る。
夜遅く、俺様が盗みを終えて帰って来ると血まみれのなまえ。
「ど、どうした!?大丈夫かなまえ!?」
「まさむねぇ、いらないのはゴミ箱ないないだよね?」
「あ、ああ…」
まさか。
「なまえね、ちゃんとゴミ箱ないないしたよ」
まさか。
俺の予感は的中してたり、しないよな…?
「けどね、おおきくてはいらなかったの。だからね…、まさむねのよくきれるほうちょうであの人を小さくしていれたよ。どう、えらい、まさむね?わたしおかたづけできるよ」
…なまえが俺様みたいに、人間を、殺した…?
「でもね、もうカラスさんにいたいいたいしないんだー!」
無邪気に笑うなまえはもう俺の知ってるなまえじゃなかった。どうなるんだなまえは。どうなるんだこれから俺たちふたりは。
「なまえ………、今日のことは、忘れちまえ」
「? わかったー!」
そして元の俺様のなまえに戻るといい。戻ってくれりゃあ、それでいい。
11.12.17
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