病み部屋 | ナノ


「すみませんがお客様、それ以上そちらへは行かないでくださいまし」
「あ、すみません」


最近僕はこの電車によく乗る、のだが。どうしても気になる場所がある。
駅長さんだろう黒い彼がちらちらと同じ場所を不思議な目付きで見つめている。いや、駅に駅長さんなのだから気にかかる場所があったっておかしくはないのだ。
けれども。彼の場合は何だか違う気がするのだ。彼が見つめる方向から冷気が漂う。確かに最近寒くなっては来ている、けれどそれとは明らかに違う冷気。彼の僕に対する目も相当冷たいものなのだが、きっと違う。
だから気になっていつもこっそり近づいてみるのだけども、こうして彼に呼び止められてしまう。


――一体あの先には何があるというのだろうか。





「ふう…」


――全く、困ったお客様でございます。

最近の常連のお客様はどうやらわたくしの一番大切な場所が気になるようでして。


「そんなに、気になりますか?」


そこまで言うのでしたら、紹介して差し上げましょうか。


「…ええ、はい」


お客様の彼が息を飲んだのがわたくしにも伝わる。


「仕方がありません。特別に、貴方様にもお見せしましょう」


一番大切な場所の鍵を取り出し、扉を開けると冷気が増す。これも全て彼女の為。


「さあなまえ様、起きてくださいまし」
「あ、ああ……」
「どうなさったのです? 顔色が悪いようですが?」
「うわああっ」


わたくしの一番大切な彼女を紹介した途端にお客様はお逃げになってしまわれました。


「なまえ様の美しさに驚かれたのでしょう。すみませんなまえ様、また睡眠をお取りになられますか? ……そうでございますか、おやすみなさいませ、なまえ様」





「…はぁ、はっ」


絶対におかしい、あの駅長!
明らかにもう絶命している女性を愛しそうに抱き上げて…!思い出しただけでも恐ろしい。もう絶対この駅は使いたくない…。





「なまえ様、わたくしめのお話を聞いてくださいますか? すみません、なまえ様はとてもお優しい。あれからあのお客様はこの駅にいらっしゃらなくなったのですよ。どうしたのでしょう、何かおありになったのでしょうか? 大丈夫ですよ、わたくしはなまえ様が一番でございます。そんなに怒らないでくださいまし。ああどうか気をお静めになってくださいまし、なまえ様。さっきも申しました通り、わたくしは貴女様が一番大切で一番愛しております。ほらこの通り」


彼女の唇に自分のそれを押し付けるとようやくなまえ様はお分かりになってくださったようですやすやと眠られた。


「なまえ様おやすみなさいませ。どうか良い夢を…」





―――

ノボリさんでヤンデレとか何を考えているのでしょうか私は



11.11.17



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