病み部屋 | ナノ


※多分微裏



なまえはこんなに大胆だっただろうか。
切なげな瞳で俺の上に馬乗りになったなまえは、緊張した面持ちで俺を見下ろす。


「…はぁっ…なまえ?」
「風雅さん、が…」
「…俺?俺がどうしたんだ、なまえ」
「風雅さんを、私のものだって言う人が、いるから…」


いつも入っている光はどこへ出かけていったのか、彼女の中に今はいない。なまえは光のない目で、俺を呼びながら笑った。
名前を呼べば、彼女は嬉しそうに俺を代わりに映す。吐息混じりの俺の声が、余裕のなさを物語っていて。


「さっき、何飲ませた…?」
「…風雅さんが、そういう気分になってくれるお薬、です」
「そんなもの、使わなくたって…っく、」
「風雅さんは私といるんだって、感じたいんです。目で、感覚で理解したい。ごめんなさい、許してくださいね」


なまえは俺の首元にキスをして、そこを舌で舐めると、満足そうな顔をした。俺の息がもっと荒くなったからだろう。
次に、俺の唇にそれを落とす。そこで俺は力の入らなかった腕を無理矢理動かし、彼女の後頭部を押さえつけた。いきなりのことに混乱した彼女の口内に舌をねじ込むなど、いとも容易い。
しばらく好き勝手やってやった後、お互いの位置を入れ替えた。これで形勢逆転だ。


「…俺の口から飲ませたなら、口内に微量なりとも残っててもおかしくないはずだ」
「あ…風雅さん…?」
「…はっ…、なまえも、誰かに自分のものって思われてるんじゃないのか?少なくとも、俺はそうだ」


多分、俺の目にも光なんてありはしない。実在するかもわからない奴らに嫉妬などが湧いてきて、八つ当たりで彼女にぶつけたいんだ。色々などす黒い感情が湧いて出て止まらない。こんな俺の目に光がある方がおかしい。
その俺の目に映る、赤く染まった頬と、ほんのり荒い息づかいが扇情的で、思わず舌なめずりする。


「そういう気分になる薬ってことは、なまえもそういう気分なんだよな?」


だいぶ落ち着いてきた息を味方に、彼女の返答も聞かず、さっき自分がされたことをし返してやる。首元にキスマークを付け足したけど。とろけた顔になっている彼女には、俺の様な形勢逆転は無理だろう。


「ふ、風雅さん…!」
「きちんと俺のものにしてやるから」


だから不安がらないで。怯えた顔もやめてくれ。
先にやったのも望んだのも、なまえなんだ。誰に何を言われたか知らないけど、不安も何も全部消してやる。

全部俺のにしてやるから、なまえ。





―――

理性が切れてスイッチ入っちゃった風雅さん




14.11.21


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