病み部屋 | ナノ


「最近の風雅…、おかしくね?」


歩きながら話していた烈くんの言葉に首を傾げる。風雅くんがおかしい。特に私は感じなかったことを、彼は真面目な顔でため息でも吐きそうな雰囲気で口にした。もともとまっすぐに相手を感じ取るタイプの彼だ、彼にしか感じられないこともあるのだろう。


「最近、オレらにも冷たいっつーかなんつーかだし、笑わねんだよな、全然」
「うーん、イメチェン?」
「いきなり内面の? いや、うん…、イメチェンの一言で片付けるなまえにもびっくりだ…」



どうやら呆れられてしまったらしい。そういえばね、と今度は私が口を開く。


「今日、風雅くんの家に行くんだ」


ハッとした様な表情で隣の彼が私を見る。それはそうだ、さっきまでおかしいと言っていた人物に会いに行くというのだから。正直、自分は何も感じていないのだけど。


「…気をつけろよ」


その一言にうなずき、行くと言った彼の家へ向かう為、烈くんと別れた。烈くんは去り際まで私を気にしてくれていたみたいで、ほんの少しだけ彼に注意しようと思った。
あ、空が灰色だ。



いらっしゃいと出迎えてくれた彼、風雅くんの家の中。特に彼におかしな様子は見られない。いったい烈くんは何を感じとったというのだろう。


「今日さ、誰とうちまで来た?」
「ひとりだよ」
「…そうか」


ほら、このちょっとおとなしいところもいつも通り。何か悩んでいるのかなとも思うのだけど、それもよくわからないし。それに何で烈くんは気をつけろだなんて言ったんだろう。
はあ、と思わず吐いたため息。どうしたのと彼が心配してくれる。もうこの際直接――。


「…まだ烈といたかった?」
「へ、烈くん? 何で烈くんなの、私は…」
「途中まで烈といただろ」


何で知っているのとも、嘘も言わせてもらえない。禁止されてはいない、でも彼の雰囲気がそうさせないのだ。
追い詰められている訳でもないのに何故か圧迫感を感じる。まるで袋の鼠の気分だ。


「いたけど烈くんは…」
「俺、迎えに行ったのに。なまえはやっぱり、烈といると楽しそうだな」
「…烈くんと風雅くんとじゃ、楽しいの種類が違うよ」


口を閉じた私に対し、風雅くんはゆっくりと目を細めた。微妙に怒りの見えるその瞳と連動する様に灰色だった空が鳴りだす。いつの間に雨なんて降っていたんだろう。いや、そうじゃない。いつから彼はここまで思い詰めていたんだろう。
バツン、と突然嫌な音を立ててこの部屋は暗くなる。雷の落ちる音に理由を察しつつ、身体を震わせた。


「…怖い?」
「………」
「停電と雷と俺…、どれが怖い?」


多分、私が一番怖いのは風雅くんだ。停電とかと相まって、余計に。何も言えない私に向かって笑う彼が一番怖い。


「…俺が怖いって、わかってるよ」


声のトーンだけは落ちているのに、彼の不気味な笑みはそのままで。私が後退りしてぶつかった壁に、あくまで軽い音を立てて彼の手が置かれた。これでは逃げることも適わない。


「でも、逃してあげない」


ああそうか、烈くんの気をつけろって、これか。
彼の笑みを、暗闇の中、雷だけが照らした。





―――

この後ヨーヨーで縛りあげるんでしょうか




14.07.25


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