私は深都を発見した冒険者の内のひとりだ。…のはずなのに何故私は元老院に閉じ込められているのだろうか。少し手を借りたい、珍しく彼が私に直々にそう言うものだから、元老院に来たらこうなってしまった。もう3日はこの状況だろうか、脱け出す術を知らない私はただここでどうにか出してもらえないだろうかと試行錯誤している。
「クジュラさん、私…何かしちゃいましたか?」
「お前は黙ってそこにいればいい」
私の食事を持ってきてくれた、私を閉じ込めた張本人であるクジュラさんに聞いてみてもいつもこの調子で冷たくあしらわれる。関係のない話だ、とまでは流石に言われていないが、どんな理由で私がここにいなければいけないのかぐらい教えてくれたって罰は当たらないはずなのに。
食事を与えてくれるところを見ると、私を殺す気は少なくとも今はないみたいで、ひとまず安心する。何かの儀式の生け贄とかに使うつもりなのか、それとも人質みたいなものなのか。海都の人間がどうなろうと、深都側の人は何にも思わないと思うけれど。
「お前は、深都に肩入れする気だと聞いた」
「…ごめんなさい」
街が混乱に陥るということは、すなわちフカビト達の思うツボになってしまうのでは、と思った私は深都に協力しようと思っていた。だがクジュラさんはそれが気に入らなかったらしい。海都のおかげで冒険できていた私たちが海都を裏切るなんて、と思っているのかもしれない。
「カザキリ、さん…」
ふと自分の仲間である、クジュラさんの紹介で出会った頼れる仲間の名を助けを求める様に思わず呟いてしまった。すると、クジュラさんの雰囲気が一瞬にして恐ろしいものに変わる。殺意を含んだ様なそれにびくりと震える私など気にせずに、彼は私を壁に追いつめ、私の頭の横に手を置いた。
「あいつを信じるのか」
「だ、だってカザキリさんは私の…」
「海都に組すればお前は助かる」
冷たい目で言い放つクジュラさんに何か言おうとするも、その威圧感で口から出かけた言葉がどんどん喉の奥へと引っ込んでいく。なんとも情けない状態の私に更に顔を近づけて、クジュラさんは言った。
「俺を信じろ、なまえ」
俺を信じろ、決断を迫られたあの時も言われた言葉だ。これはきっと、決断なのだろう。仲間を信じるか、クジュラさんを信じるか。
目の前の青の瞳が果たして私に自由に選ばせてくれるかは、わからないけど。
―――
クジュラさんの「俺を信じろ」にやられまして…!
13.12.14
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