病み部屋 | ナノ


お得意様の人が殺された、アルヴィンさんにそう聞かされて、顔から血が引いて真っ青になっていくのを感じた。その人はアルヴィンさんの商事のお得意様だったのだけど、ひょんな事から親しくなって、よく話すようになっていた人だった。良くしてもらっていた分、ショックが大きいのと、身近な人が殺されたという恐怖で体が震える。


「なまえ、大丈夫か?」
「…正直、あんまり…。どうしても、恐くて」


震えている自分を抱きしめる様に腕を交差させた。脳内にちらつくその人の元気な姿。不謹慎な話ではあるけど、今度は自分やアルヴィンさん、はたまたユルゲンスさんが狙われるのではという不安に駆られて仕方がない。
ふいに私は見慣れた紺のスーツに包まれる。いや、スーツだけではなくスーツごと、それを着た人に。


「アルヴィンさん…?」
「なまえ、怖かったよな。ゴメンな」
「アルヴィンさん、恐い…!」
「大丈夫だよなまえ。俺が守ってやるから」


――そう、なまえを全てのモノから
俺を信用しきって、必死に俺にすがってくるなまえにほくそ笑む。俺の背に腕を回す彼女の行動に更に口角が上がっていっているのは鏡を見ずともわかることだ。
俺が殺したあの男だって、いい人ぶっておきながら隙あらばなまえを利用しようと考えていた。俺が隙を与えない様にしていたから彼女は俺の腕の中で現在進行中で震えているけれど、もしひとりになんかしていたらどこに売り飛ばされていたかもわからない。
守ってやらなきゃな、俺が。


「俺が守るよ」
「ありがとう…ございます、アルヴィンさん」


裏切っているつもりはないが、犯人が自分であることを隠しているだけで、嘘になるのだろうか。いや、言葉が足りないだけだな。
そういえば最近なまえが気になってるとか言ってる男がいたっけか。ダメだぜなまえ、そんなこと俺に言っちまったら。なまえをたぶらかす男というのも俺にとっては排除対象だ。危ない芽ってのは、早い内に摘んでおくモンだよな。





―――

おとなしく守られてくれりゃ、いいんだよ




13.07.16



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